隊長と俺
〜その6・アンタの視線が痛すぎる〜
アスランさんの腕の中で、ひとしきり泣いてしまったシン君は、 泣き疲れてしまったのか、そのままベッドで寝てしまいました… |
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「よしよし…ようやく泣きやんで眠ったか。まるで、赤ん坊だな…しかしまぁ、たまには泣きたいことだってあるだろう。寂しい時に泣きたくなるのは、誰だって同じだからなぁ」 |
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(それにしても、掃除も何もしなかったのか?ゴミ箱が満杯じゃないか。毎日掃除だけは欠かさない、シンにしては珍しいな…) 溢れかえりそうになっているゴミ箱の中身を、さっさと片付けようとしたアスランさんでしたが… (何だ、ティッシュの山か…勝手に片付けたら、コイツも恥ずかしがるか?そりゃ、コイツも年頃の男だからなぁ。ここはそっとしておいて、自分で片付けさせるか…) ゴミ箱の中で山になっているクシャクシャのティッシュペーパーが意味するところに気づくと、中にセットされた収集用のポリ袋を、そっと元に戻すのでありました。 |
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(何だ?こんなモノを飾ったのか、シンは…赤いパイスーってことは、ずいぶん前の俺の写真だな…こんな写真を撮られた憶えは無いが、どうせ、ルナマリアかメイリンあたりが隠し撮りでもしたんだろう…しかし、シンのヤツ、こんなモノを飾る気になるとは、どうしたんだろうな?) 「どうしたんだろうな?」とは、隊長…それはニブすぎです。だいたい、アナタの子犬君は… |
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「あぁっ…あんっ…な、何でだよ…フツーなら、一回抜いちゃえば結構スッキリするはずなのに、もう、連続三回目だよ…んあぁっ…アスラン…さん…もっと…オレ、もっとイきたい…」 アナタの子犬君は、日がな一日アナタをオカズに抜きまくった後、猛烈なショックを受けてアナタにしがみついてしまったのですから。 |
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さて、メールのチェックでもしようと書斎に向かったアスランさん。 デスクの上に置かれた『バーチャルシアター』の機械が、電源を入れたままなのに気がつきました。 (ん?これは…キラが引越祝いにくれたヤツだったな。電源が入ってるのは…昼間にでもシンが見たのか?しかし、電源を切らなかったところを見ると…何かアイツにショックを受けさせる映像でも入っていたのだろうか?しかし、キラがそんなモノを贈って寄こすかなぁ…) アスランさんがおそるおそる機械を頭にセットしてみると、どうやら映像は全て再生が終わっていたようで、目の前にはテレビでいう「砂嵐」が映っているだけでした。 そこで、再び再生スイッチを押してみると… |
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(お、お、お、おいっ!!何だこれはッ!?何故にいきなりキラのシャワーシーンが…って、リアルに音まで聞こえるじゃないかこれは!?い、いや、バーチャルシアターなんだから、音が聞こえて当然か?し、しかしこれは…) 『ねぇ、アスラン…早くおいでよ…僕、もうアソコがこんなに固くなって、ほら、後ろもヒクヒクしてる…アスランが欲しいの。たまらなく欲しいんだよ、だから、アスラン…来て…』 |
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「き、キラ!ちょっと待て、ちょっと待ておいコラ!!いいか、俺たちはもう、昔の俺たちとは違うんだ。まがりなりにも俺たちは、いや、少なくともお前は、国家を動かす重要なポジションに…だからコラ!そんなにエッチな表情で俺を見るんじゃないっ!股を広げるな股を!馬鹿者!!顔を埋めたくなるじゃないか…いや、そうではなくてだな!キラ!!だから、尻をこっちに向けるなおいっ!そんなに誘われたら、入れたくなる…いや、うわっ、違うッ!!そうじゃないぞ俺は!!」 現実との境目が見えなくなっているのか、ひとり書斎で大騒ぎするアスランさん。 どうも、『国家』というプレッシャーに押されて、無理に本能を胸に閉じこめて禁欲されているのでしょうか…というより、上手い具合に遠隔操作が為されているようで、さすがはキラさんといったところです。 |
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(何なんだ、アレは…シンもアレを見たのか?しかし、それならば俺にしがみつくようなものではないがなぁ…いずれにしても、キラには一言文句を言っておかねばならんな) アスランさんは、シン君とは別の意味でショックを受けられた様子で、落ち着くためにホームバーで一杯引っかけてみるのですが… (しかし、あんなにエロティックなキラを見るのは、久しぶりだな…心臓がかなりドキドキしてしまった。以前なら、こんな状態になったら何を差し置いても、アイツのところへすっ飛んで行くのだが…しかし、今はなぁ…) |
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(それにしても、疲れた…ふぅ…まったく、家に帰ってまで疲れるとは、何だかなぁ…一杯引っかけたことだし、のんびり風呂にでも浸かって、寝るか) どうにも疲れる役回りばかりを演じさせられているアスランさん。 一杯引っかけて風呂に入って寝る…まぁ、サラリーマンとしてはある意味『お約束』の、夜の行動ではあるわけですが… 「アスランさん…オレも、一緒に風呂入っていいですか?」 「ん?」 浴槽の中で、いい気分でまどろみ始めたアスランさんが、自分を呼びかける声の方向へ視線を向けると、バスルームの入口に、スッポンポンになっているシン君が立っていました… |
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「あぁ、シン…目が覚めたのか?いいぞ」 「お邪魔します…」 「あぁ」 (何だ、前も隠さずに大胆だな…まぁ、この家には俺とシンしかいないのだから、別に隠す必要もないわけだが…それにしても、コイツもなかなかいいモノを持ってるじゃないか。まだ使い慣れてはいないようだが…フフ…よく見れば、半勃ちしているじゃないか。どうしたんだ?何なら俺がもっと大きくしてやってもいいが…いや、大きくしてというより、どうせ風呂では裸のつきあいなのだから、俺の手でイかせてやっても…ひとりでティッシュの山を作らせていては、もったいないだろう………いかんいかん!何を変な妄想をしているんだオレは?まさかコイツが、俺に身を預けてのぼり詰めるなんてことはあり得んな。下手をするとぶん殴られかねん。だいたい、コイツも『男』だからこそ、ティッシュの山を作るわけで…というか、どうもさっきのバーチャルシアターのせいで…まったく、キラにはじゅうぶん文句を言ってやらんと) 「アスランさん、さっきはすんませんでした…って、もしもし?」 |
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「えっ!?あ…湯の温度は大丈夫か?ぬるくないか?」 「何言ってんですか…つーか、あんまりオレの一点をジロジロ見ないでくださいよ、エロエロ光線発射ってな目でさぁ。いったい、その視線で何人の女を…あ、何人の女と男を落としたんでしょうねぇ?」 「な、何だと?女はともかく、男ってのは…いや、すまん。ついうっかり、クセで…じゃなく…」 「ヘヘッ、図星だな?それで、何人落としたんですって?もしかして、女より男の方が多いんじゃないんですか?」 「うん…お前がどう思うかわからんが、女でイイ線まで行ったのは、カガリくらいで…いや、イイ線というか、どうも感情だけが上滑りしてしまってだな…結局、肝心のアレでソレな時は、かなり難儀してコイツを役に立たせたというか…これでは指輪を外されても、仕方ないというか」 「えっ…?」 (おいおい…何を神妙な顔して自分の股ぐらを眺めてるんだよこの人は?) 「まぁ、ラクスは、結局のところ本人の意志と関係のないところで話が出来上がっていただけだし、ミーアは、何も無いままに最悪な結末を迎えさせてしまったし、メイリンは、気が利く優しい女の子だとは思うが、結局、そこまでなんだよな…逆に、男は…何を差し置いても、例の准将だな。それから…男だろ?えーと…行きずりの関係を含めれば、ZAFTとORBで、何人いたかな…?」 「アンタ、何を正直に答えてるんですか?つーか、男ばっかなのかよ!アンタ、やっぱ真性なんですね?」 「しまった!!…お、お前が誘導尋問するから…」 「これのどこが誘導尋問だっつーんですか?それより、背中流してあげますよ、アスランさん」 「あぁ、悪いな…」 「じゃ、後ろ向いて…エヘヘ…ね、アスランさん?そのうちオレも、その『男』の勘定のウチに入りますかねぇ?例えばオレを、アスランさんの疲れた身体の、癒しの対象にしたい…みたいな」 「うぅん…どうかなぁ?最近は、てんでそっちの方に時間を費やせないというか…第一、お前の場合、まずはお前自身の身の振り方を考えてやらんとな…って、お前が癒しの対象?それは想像できなかったよ…あ、ハッキリ言ってしまって、すまん…」 「そんなに真剣に返さないでくださいよ…ま、癒しの対象ってのはウソですよ、ウソ。オレだって、それくらいはわかってます」 (ちぇっ…さり気なく誘ってみたつもりだったのに、かわされたか…) 「すまん…」 アスランさん、妙なところでずいぶんハッキリと物を言いすぎのようです… |
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「アスランさん…さっきは、ホントにすんませんでした。いきなり抱きついて、それだけじゃなく…でも、ぶん殴られないで、よかったです」 「ん?あぁ…別に構わないさ。シンが俺を頼りたいのなら、それでいい。俺はそのつもりでお前と同居することを自分から言い出したのだし、もちろん俺は死にもしないし、どこにも行かないよ。ただ、お前がどうしても俺と一緒にいるのはイヤだと言うのなら、それはそれで、仕方のないことだ。俺は、お前に一生恨まれても、何一つ言い返せないヤツなんだろうからな」 「そんなこと無いです!恨むなんて、そんなこと、あるわけねぇよ…それにしても、えらく肩が凝ってますね、アスランさん?」 「あぁ。かなり、ガチガチだろう?…いつになっても、仕事に追われる身だからなぁ。特に今は、余計にストレスの溜まるポストに就いているし…まぁ、仕方ないさ。ただ、ここで言っていいものかどうかはわからんが、オフィスにいても現場にいても、お前が俺の側にいて、一緒に仕事をしてくれたらなぁとは、思っているんだが…」 「マジッすか!?」 「あぁ。しかし、こればっかりは俺の一存で決められる話ではないからな…折を見てカガリにでも話してみるか…キラでは話にならん。おそらくな」 「えへへ…アスランさぁん…」 「こ、こら!痛いぞ…そんなに指に力を入れずに、もっと丁寧にやってくれないか…」 「あ、すんません。オレ、ちょっと嬉しくて…」 (アスランさんの背中って、結構広いんだな…オレなんかより、全然逞しいや。何だかんだ言っても、カッコいいんだよな…ふぅ…もし、オレが今ここで背中からギューッと抱きしめて、首筋にキスして、前の方を手でそっと包んで、耳元に息を吹きかけて、「オレを抱いてください」なんて囁いたら、やっぱ、怒るだろうなぁ…まだ、無理だよなぁ…いくらなんでも、アスランさんが、オレのことをそこまで想ってくれてるかっていうと、ビミョーなんだよな…) 「どうした?手が止まったと思ったら、何をブツブツ言ってるんだ?」 「あ…何でもないです…」 |
シン君の密かな想いが届くのは、もう少し先のことになりそうです… |
CASTER, 2006
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